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home  writing's index  NP通信社「プロボノを始めよう」
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これからプロボノはどのように広がっていくのか?

 

 仕事の経験やスキルを活かした社会貢献活動「プロボノ」は、大都市を中心に広がりを見せてきた。現在、筆者が運営するプロボノの活動である「サービスグラント」には約1,000名の社会人が「プロボノワーカー」として登録している。これまでに東京で六九件のNPOを支援するプロジェクトを実施し、今年四月からは関西で六件のプロジェクトをスタートさせた。

 だが、こうしたプロボノに注目する動きは大都市だけに留まらない。むしろ、少子高齢化の波が押し寄せ、活力ある地域づくりに対する強いニーズを持つ地域社会においても、プロボノに対する関心と期待が高まっている。今年から来年にかけて、日本各地でプロボノをテーマとしたセミナーやシンポジウムが開催されている。筆者が知るだけでも、広島、山形、福岡、長崎、岡山、福島、秋田、神戸など、全国各地に及ぶ。

 ところで、東京・大阪のような大都市のプロボノの仕組みを、地域社会にそのまま持ち込んで、果たしてうまくいくだろうか。もちろん、うまくいくケースもあるだろうが、地域社会なりの工夫も必要であると感じる。ここでは、地域でプロボノに取り組む際にポイントとなることを3点挙げておこう。

 一つは、プロボノワーカーとなる人材の違いによるものである。企業の本社機能が集中する大都市では、企画・マーケティング・経営戦略などの部門に所属する企業人や、デザイナー・コピーライター等のクリエイターが多数いる。これに対して、その他地域にはこうした人材が少なく、一方で、いわゆる「士業」と呼ばれる、弁護士、税理士、社労士、行政書士等の存在感が相対的に大きく感じられる。また、企業人については、営業部門や生産部門に所属する人が相対的に多くなる。どのような人材が多いかという地域ごとの特性を生かしたプロボノの取り組みが求められるだろう。

 二点目は、NPOについても、大都市に比べて数が少ないことが挙げられる。そのため、プロボノによる支援先をNPOに限定してしまうと視野が狭まってしまう。プロボノは、本来、社会的・公共的な目的のために活動する主体であれば幅広く支援対象とすることができる。米国では、公立学校や病院に対するプロボノも盛んに行われていると聞く。社会起業家や地場産業など、社会課題の解決や地域づくりの担い手となる企業であれば、プロボノによる支援も考えられるだろう。プロボノを通じた支援先についても、地域の状況にふさわしい選び方を検討する必要がある。

 三点目は、地域社会は、大都市以上に人間関係が濃密であることも配慮が必要だ。プロボノを通じて一旦「つながり」ができると、気が付くといつの間にかそれが「しがらみ」になってしまう、ということがより起こりやすい。しかし、ボランティア活動は、ある程度の気軽さがなければ続けていけない。地域においてこそ、プロボノを最初に始めるタイミングで、プロボノによって支援する期間や支援の内容・範囲等を明確にしておき、無理なく持続可能に参加できるようにするコーディネート手法が求められるだろう。

 数年前に東京で始まり、今少しずつ国内各地に広がりを見せようとしているプロボノ。まだそれがどのような実績や成果を収めるかは未知数だ。しかしながら、国や地方自治体が多くの借金を抱え、行政機能も縮小の方向に向かわざるを得ない現状において、プロボノが効果的に機能すれば、より多くの一般市民が、前向きで具体的な形で社会課題の解決に取り組むムーブメントへとつなげていくことができるかもしれない。プロボノの挑戦はまだ始まったばかりだ。