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home  writing's index  NP通信社「プロボノを始めよう」
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企業人の新しいボランティア「プロボノ」を始めよう

 

 みなさんは、プロボノという言葉をご存知だろうか。

 プロボノとは、ラテン語の「Pro Bono Publico(公共善のために)」に由来する言葉で、職業をつうじて培ったスキルやノウハウ、経験等を、社会貢献のために生かすことを意味する。プロボノは、広い意味ではボランティアの一つだが、一般的なボランティアと違う点は、仕事のスキルを活かす点にある。例えば、弁護士が震災の被災者に対して法律相談を無償で行うといった活動や、経理のプロがNPOの会計を手伝うといったことはプロボノの一例ということができる。

 いま、仕事のスキルを活かした社会貢献「プロボノ」に対する関心が高まりを見せている。
 筆者は、プロボノとして自身のビジネススキルを社会貢献に生かしたいと考えるボランティア(プロボノワーカーと呼んでいる)と、ビジネススキルを活かして活動基盤を強化したいと考えるNPOとをコーディネートする「サービスグラント」というNPOを運営している。サービスグラントは、NPOを支援するNPOとして、主にプロボノによってNPOのウェブサイトの更新やパンフレットの制作など、広報・情報発信の支援を中心に行ってきた。2005年の活動開始当初から数年は、参加者も少なく、活動も活発とは言えない状態だった。しかし、2009年末ごろから最近にかけてはプロボノワーカーとして登録する人が増え始め、もう少しで1,000人の登録者を集めるまでになった。「プロボノ」という言葉も、新聞・テレビ等で紹介されるようになり、少しずつ人口に膾炙するようになってきた。

 ところで、プロボノワーカーは、仕事が少なく暇な人かというと、決してそうではない。むしろ、筆者が出会うプロボノワーカーはほとんどみな日々忙しく仕事をしており、仕事が好きで、バリバリと働いている前向きな人たちばかりという印象だ。そんな忙しい人たちが、なぜ、さらにボランティアなどに参加するのだろうか。

 そのヒントが、過去に実際にプロジェクトに参加した経験を持つ約100人のプロボノワーカーが回答したアンケート結果にある。

 プロボノに参加したことによって、自身にどのような変化が起こったか、を尋ねた設問で、92%の人が「自身の視野が広がり、人間的な成長につながった」と回答している。企業人として日々仕事をする中で、業務以外のことにも関心を持ち、自身の視野を広げたいと思っている人は少なくないだろう。NPOをはじめ「非営利」という、企業とはまったく違った行動原理を持つ団体を相手にプロジェクトに取り組み、自身の経験を広げることが、自身の成長にもつながるという実感を持つプロボノワーカーは非常に多い。

 だがそれだけではない。注目すべきは、78%の人が「今の仕事に活かせる有意義な経験を得ることができた」と回答していることだ。自身の人間的成長が得られるだけでも収穫だと思うが、さらに仕事にも役立つ経験を実感している人が大多数に上るという結果は、プロボノの特徴を見事に表している。

 冒頭に述べたように、プロボノとは、社会貢献活動であり、研修活動でも教育活動でもない。プロボノを通じて、NPOに役立つ成果物を提供することが主目的だ。しかしその副産物として、参加したプロボノワーカー自身も、自身の人間的成長や仕事へのプラスの効果を実感している点に注目していただきたい。社会貢献をしながら、自身にもプラスがある、という「一粒で二度おいしい」プロボノ。この連載では、プロボノについての理解を深め、その可能性を探っていきたい。