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「女性の活躍」を後押しする、育児休暇の戦略的活用法 ~ 復職支援における「ママボノ」の可能性

 

 政府の成長戦略の一環として「女性の活躍」がうたわれている。中央官庁の人事で女性が幹部職員に多く登用されたり、女性の管理職比率を高めようとする企業の動きも盛んになってきた。指導的地位にある女性を増やす「2020年30%」といった国の数値目標が掲げられるようにもなった。

 ただ現実は、結婚や出産を機会に退職する女性がいまだに大多数を占めている。国立人口問題研究所によると、第一子出産にともない仕事を退職する女性は43.9%。妊娠前から無職の24.1%を加えると、子を持つ女性のおよそ7割は、一時的に仕事から離れてしまう。

 それでも、育児休暇の取得率は年々着実に高まっている。1985~89年の5.7%に対して、2005~09年には17.1%と、3倍以上に増加しているのだ。このことは、出産を迎えても切れ目のないキャリアを築こうとする女性が着実に増えていることを意味する。

 だが問題はその先かもしれない。第一生命総合研究所によると、育休を取得した女性の8割が「復帰後に育児と仕事との両立ができるか不安」、また6割が「職場復帰できるか不安」と回答している。育休取得率が高まることは素晴らしいことだが、だからこそこれから求められることは、育休取得後のスムーズな職場復帰を支援するような施策ではないだろうか。

 育休後の復職に向けた不安を和らげ、むしろ女性たちの背中を押して自信を持って復職をするように促す施策の一つとして、ここでは「ママボノ」の取り組みを紹介したい。

 「ママボノ」とは、ママたちによるプロボノを略した言葉で、さらに「プロボノ」とは、仕事で培った経験やスキルを活かした社会貢献活動を意味する。プロボノでは、業務で培った様々な経験を使って、非営利活動を支援する。労力を提供する一般的なボランティアと異なり、営業・企画・デザイン・広報・経営戦略など、日頃のビジネススキルを生かして社会に役立てることができる点が特徴だ。

 2014年1月から試験的にスタートした「ママボノ」では、子育て中の女性だけでチームを組み、NPO支援に取り組んでいる。これまでに累計22人の女性が参加し、3件のプロジェクトを実施した。その際、チームの人数を7~8名とし、子どもの病気などで欠席しても他の人がカバーできるよう余裕を持たせた人数構成としたり、ミーティングの際には、授乳やおむつ替えができるスペースを提供するといった、子育て中の女性でも参加しやすい環境を提供している。

 ママボノに参加するにあたって、当初、女性たちからは口々に様々な不安の声が聞こえてくる。「育休明けの職場復帰の前に、リハビリが必要ではないかと感じた」「毎日子どもと話す時間が長くなっている。仕事の勘を取り戻したい」等々。ところが、プロジェクト終了時のアンケートでは、参加者の3分の2がママボノに参加したことで復職に向けた不安が和らいだと回答している。参加者の声を中心に、ママボノの効果と思われる点をいくつか紹介しよう。

[1] 仕事の感覚を取り戻すウォーミングアップになる
ママボノに参加して本業以外の場面で実務経験を味わうことで、しばらく業務から遠ざかっていた女性たちが、復職に向けてウォーミングアップする機会を得ることができる。例えば、「前回の育休終了時は子育ての頭のまま復帰し、エンジンがかかるまでに時間がかかったように思うが、すぐに走り出したい状態で復帰できるのがとても有難い」といった参加者の声が象徴的である。

[2] 復職後の生活を具体的にシミュレーションできる
ママボノは、子育てをしながら働くことに対するイメージを、より具体的に持つ機会ともなったようだ。「10時半集合でも朝があんなに忙しいなら、復職する際、夫の協力は必要不可欠だと実感しました。いいシミュレーションができました」といった声に顕著に表れている。

[3] ロールモデルや一緒に頑張る仲間が見つかる
同じチームの中に、第二子、第三子を持つ女性が参加したり、夫との子育てのコミュニケーションや役割分担の仕方などを意見交換したりする中で、仕事と子育てを両立するロールモデルとなる人を見つけたり、復職後も交流を続けられる仲間づくりにつながったという声も多数聞かれた。

 このように、ママボノには、仕事の感覚を取り戻し、復職のウォーミングアップに結びつく効果が見られることが分かってきた。

 だが、それだけであろうか。その先にあるものは何か。

 それは、女性たちが自信を持って復職することであり、復職した職場でリーダーシップを発揮して活躍する可能性を高めることではないだろうか。

 冒頭に「2020年30%」という国の数値目標に触れたが、日本の女性の管理職比率が世界的に見て低いことは、長年指摘されていることだ。総務省の労働力調査によると、管理職に占める女性の割合は11.6%、管理職のおよそ10人中9人は男性という状況である。女性であれ男性であれ、指導的地位に就くためには、ビジネスパーソンとしてのキャリアを積み上げていかなければならない。そのためには、出産を機に退職や非正規雇用に転換し、キャリアが途絶えてしまうことが大きなハンディキャップとなり得る。また、復職後は、未婚の女性社員や男性社員よりも時間的な制約が多くなることは否めない。子育てをする女性にとって、働く時間の量で仲間と競ってもあまり勝ち目はないだろう。育休取得率を高めること、そして、復職後の仕事の質を向上させること、この二つの施策が両輪となって実行されなければならない。

 もう一つ、ママボノ参加者の声を紹介しよう。「自分が将来マネジャーになった時を想定して働け、将来像が具体化した」。これは、プロジェクトマネジャーを担当した女性の声である。

 ママボノは、子育て中の女性を、復職に向けてウォーミングアップするだけに留まらない。復職後の働き方において、さらに一歩高いステージに立つために、背中を押す機会ともなり得る。出産という、女性だけが経験する機会を、ハンディキャップではなく貴重な転機として活かす。ママボノには、そのような機会を創出する可能性があるのではないかと思う。

【出典】「人事実務」