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世界に学ぶ プロボノの新スタイル

 

 今年二月、ニューヨークで、国際プロボノサミットというイベントが開かれた。プロボノとは、企業人等が仕事で培ったスキルや経験を活かしてNPOなどを支援する社会貢献活動のことだが、今プロボノは世界的な広がりを見せている。サミットには米国内から約30団体、さらに日本を含む世界十二ヵ国からもプロボノを実践する団体が集まり、それぞれの国・地域におけるプロボノの取り組みについて活発な情報交換が繰り広げられた。そこで印象的だったことを二つ紹介しよう。

多様でユニーク
 一つはプロボノにも実に多様なスタイルがあることだ。特に米国では、それぞれの団体が、他に誰も取り組んでいないようなユニークなことにチャレンジしようと、積極的に新しいことに挑戦している様子が際立っていた。弁護士がNPOや社会的弱者に対して法律相談に乗る活動や、IT、マーケティング等の専門家がNPOの情報発信や事業戦略を支援する取り組みなどはすでに確立されたモデルと言えるが、それだけではない。例えば、施設の改築や整備のニーズを抱えるNPOと建築事務所とをつなぐ取り組みや、データサイエンティストを結集しNPOや公共セクターのビッグデータの解析や活用をプロボノで支援する活動、NPOの災害時における事業継続計画を支援する活動など、一つひとつがユニークで、どれも大事な活動だ。

 筆者は、2010年4月の繊研教室で、社会貢献活動においても「品揃え」が必要ということを書いているが、こうした多様なプロボノの在り方を目にして、改めてその思いを強くした。しかも、パイの奪い合いではなく、まだ触れられていないニーズや可能性を掘り起こすというフロンティア精神が、米国のNPOには息づいているのだと感じた。日本のNPOの人間として、見習いたいと思うところだ。

短期集中
 もう一つ印象的だったのは、一日や週末で実施する、短期型のプロボノの取り組みが世界的に広がりを見せていることだ。
 筆者が代表を務めるサービスグラントでは、NPOに対してウェブサイトや事業計画立案の支援を行っている。そこでは、企業人等が5~6人でチームを組み、一人当たり週3~5時間程度をつかって約6ヵ月間にわたってNPOを支援する。じっくり腰を据えてNPOと向き合い、社会課題についての理解を深められることから、いつの間にか「大人の社会科見学」というキャッチコピーがつくようになった。

 そうはいっても、長期間のコミットメントに二の足を踏む人は少なくない。そこで興味深かったのが中国でプロボノに取り組む「恵沢人」という団体の事例だ。恵沢人では、従来半年かかるプロジェクトを、まずは半分に圧縮して3ヵ月にした。それでも、NPOからも企業人から早く終わらせてほしいという要望が多く、最終的には週末2日間でほぼ完結するプログラムに至った。これは「マラソンモデル」と呼ばれており、土日の2日間会議室などにほぼ缶詰め状態になり、その期間にフル稼働して、NPOのウェブサイトや事業計画を仕上げてしまうということだ。忙しい中国の企業人も、このような集中した形であれば時間を割くことができ、しかも限られた時間で成果を出すことが、終わった時の爽快感にもつながるということだ。

大阪プロボノマラソン
 こうした海外で得たヒントを、さっそく日本で取り入れるべく、この秋、大阪で1日体験型のプロボノイベント「大阪プロボノマラソン」を開催する。ここでは、上記の学びを活かして、これまでにない多様な支援内容を用意し、また、短期間で成果を出すというスタイルに挑戦する。

 10月に開催予定の大阪プロボノマラソンは、大阪市内のNPO・地域団体などを対象に、1日でできる比較的軽めのプロボノ支援を短期集中型で行うイベントだ。目標は100人の企業人が30のNPO等を支援すること。支援内容は、商品企画や店舗運営、課題整理などのコンサルティング、イベントチラシやロゴ制作などのクリエイティブ支援、会計、法律などの専門相談など、15種類の支援メニューを用意した。こうした短期で完結するプログラムによって、これまで以上に幅広いNPOや企業人の参加を期待したい。

 ところで、短期型のプロジェクトに取り組む一方で、従来からある長期のプロボノ経験者からは「NPOを本当に深く理解するには半年ぐらい必要」という声も聞いている。やはり、大切なことは多様性であり、何か一つが正解ということはなく、いろいろな参加の仕方がその人なりに選べるということが社会貢献という文化を豊かにする上で必要なのだろうと思う。

【出典】繊研新聞 2013年 7月23日