オフィス・アップサイジング

home  writing's index  広告 - future social design
記事・論文

オープンマネープロジェクト

 

オープンマネープロジェクト

民間企業と地域通貨
マイケル・リントン氏が提案する「コミュニティウェイ」は、地域通貨が企業・NPO・個人の間を流通することによって、NPOや社会貢献活動の支援と同時に、企業のマーケティングを実現するモデルである。

地域通貨というと、日本ではどうしても、個人間におけるサービス取引の一点をイメージしてしまいがちだ。しかし、実はその先には、地域通貨が社会・経済全体へと波及し、その流れを変えていく、大きな可能性が秘められている。

特に、民間企業が参加することで、地域通貨の流れはより強力なものになる。しかも、昨今の市場環境の中で、流通・小売業、サービス業をはじめとする多くの民間企業は、商品・サービスの品質や価格による競争、ポイント制などによる販促競争が、もはや差別化につながらなくなりつつある現実を目の当たりにしている。そこで、地域通貨の活用を、新たな差別化戦略として、真剣に考えるべき時代が訪れたといっても過言ではない。

そこで、以下では、 「企業はいかにして地域通貨を利用できるか」を基本スタンスとしながら、地域通貨の可能性について、議論を進めていく。


貢献の対価
地域通貨の最も根本的な特質は、地域通貨が「地域コミュニティに対する貢献」に対して発行される、という点である。しかも、これらの貢献は、必ずしも「円」という指標によっては十分に評価されてこなかった、より「公益的な価値」と関係している。

ここで言う「貢献」には、
①労働による貢献(例:美化・清掃活動への参加)
②情報による貢献(例:アドバイスの提供)
③金銭による貢献(例:森林保全活動への寄付)
などが考えられる。これらの貢献をしてくれた人に対して、地域通貨を発行する。言い換えれば、地域通貨は、貢献の「対価」であり、貢献に対する「感謝状」の意味合いを持つものである。

特筆すべきは、金銭による貢献も、地域社会への貢献として捉え、地域通貨発行の対象とする、という点である。例えば、あるNPOに対して、10,000円の寄付を行った人に対して、10,000CC(地域通貨)を手渡す。NPOには現金が集まり、個人は地域通貨を手にする。このように、地域通貨は、NPOや地域活動団体のファンドレイジングの一手法として利用することができる。

社会貢献+販売促進
従来、民間企業による社会貢献の形には、
①協賛金を支払う
②従業員を参加させる
という方法が主流となっている。しかし、これらの活動は、いずれも限られた予算と、限られた従業員の時間の中で、営利追求という企業活動の最大かつ唯一の目的と、次元を異にする世界で営まれてきた。

民間企業がこれまで取り組んできた数々の社会貢献活動に対しては惜しみない敬意を払いつつも、その限界を超えることができないだろうか。「社会貢献とマーケティングは別物である」という発想に、風穴を開けることはできないだろうか。

いま、多くのお店やレストランが、クーポン券を発行したり、割引セールを行っている。とても青臭いことを言うようだが、それだけのコストがマーケティングに充てられているのなら、それを少しでも、社会に役立つことに振り分けてほしい。・・・そこにヒントがあるのではないか。

結論を急げば、企業は「地域通貨を受け取る」ことで十分だ。地域社会に貢献した人の手元にある地域通貨を、価格の何パーセント分か受け取るだけで、企業は地域社会貢献をしたことになる。しかも、地域通貨を受け取ることは、地域通貨を持っている顧客を呼び込むことにもつながる。このとき、地域通貨は、社会貢献とマーケティングを同時に実現するツールとなるだろう。


付加価値向上、そして、B2B取引
企業が受け取った地域通貨を、企業が取り扱う方法には、次の2つの考え方がある。
① クーポン券のように販促コストとして処理する
② まさしく「通貨」のように他の用途に利用する
企業によっては、地域通貨を受け取るだけでもマーケティング効果がある、と割り切って、そのまま退蔵させてしまうことも可能である。しかし、せっかく受け取った地域通貨を、企業もまた利用して、自らの付加価値を高めたり、他の企業との取引に利用することもできる。

例えば、いくつかのWEBコミュニティでは、会員が掲示板に投稿したことに対して何ポイント、アンケートに回答したら何ポイント、といったポイント制を導入している。これは、顧客の声を集めたり、顧客とのインタラクションを増やすことがそのコミュニティにとっての価値であるということを意味している。

新しい商品やサービスの提案、サービス改善のアドバイス、あるいは時にはクレームさえもが、企業にとっての価値になる時代がやって来ている。顧客の声をしっかりと聞き届けることは、企業が顧客ニーズをいち早く捉え、他社と差別化した商品・サービスを開発していくための生命線となっていく。このとき、地域通貨は、企業が、自社の付加価値を向上させたり、顧客とのコミュニケーションを深めるための有力なツールとなるのである。

また、地域通貨を従業員のボーナスとして利用したり、また、スイスのWIRの例、あるいは、滋賀県草津市の「おうみ」の例などを見ると、企業間取引に地域通貨を利用することも、決して不可能ではないように思われる。


Ethical Traveler
カナダのバンクーバー島に、トフィノという観光地がある。ここは、沖合いに鯨が生息する、自然に恵まれた土地だ。このトフィノにおいて、地域通貨が、地元の企業と鯨の保護活動と観光客とを結びつけることに利用されている。

トフィノを訪れた観光客は、カナダドルをトフィノの地域通貨「コーストダラー」と交換する。カナダドルは鯨の生態系保護などの資金として活用される。一方、観光客が受け取った地域通貨は、地域の観光資源を保護することで結果的に恩恵を受ける地元のホテルやレストランなどが受け取っている。受け取った地域通貨は、これらの企業間でも利用することができる。

このとき、観光客は、単に観光地で消費をするだけのコンシューマーではなく、地域の観光資源を育てるコントリビューターとなる。これを、トフィノではethical traveler --倫理的な旅行者? と呼んでいる。


シブヤモデル
日本でも、地域通貨のポテンシャルを最大限に発揮できる場が与えられた。

いま、東京・渋谷で、地域通貨の動きが始まろうとしている。

この図は、そこで産声を上げようととしている生命的過程の原型だ。このプロジェクトが成長するにつれて、予想もしなかったような進化を遂げるかもしれない。

今は、まだ、これ以上のことを言うことはできない。しかし、おそらく、次回の「広告」では、もっと詳細を明らかにすることができるだろう。


「アースデイマネー」試論
地域通貨の考え方、あるいは、これまで説明してきたコミュニティウェイの手法は、社会的なニーズや解決すべき課題があるところには、何らかの形で応用することが可能な仕組みである。

そこで、ここでは、「アースデイマネー」というものを考えてみよう。これは、環境を保護したり、修復したり、環境に配慮するような経済の流れを作り出すために、地域通貨をどのように役立てることができるか、という問いに対する、ひとつの戦略提案である。


地域通貨フォーラム2001
「地域通貨フォーラム」は、大小さまざまの民間企業や、全国の地方自治体に地域通貨のことを知ってもらい、企業活動の中に、自治体のまちづくりの中に、社会問題の解決や社会貢献活動をシステマティックに内包してもらうための戦略を、具体的に検討するための場である。

地域通貨フォーラムでは、3つのワーキンググループを用意し、特定の地域やコミュニティを取り上げながら、地域通貨の実行支援を行っていく。同時に、これらの活動について、情報発信を行う。

地域通貨フォーラムの設立総会は、7月上旬に開催予定である。