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第2回 仕事で培ったスキルを生かす「サービスグラント」の実力(その一)

 

 NPOや地域の団体にボランティアとして参加してみようと思うとき、誰もが真っ先に思い浮かべるのが、自分にできることは何だろうか?ということだろう。特に、日ごろは事務所に勤め、普段はパソコンをつかって書類を作成したり、顧客を訪問して営業の打ち合わせを行ったり、社内会議でプレゼンテーションをしたり、といった仕事をしている人にとっては、ボランティアの現場で行われるさまざまな作業が、果たして自分にできるのだろうか、自分で役に立つのだろうか、あるいは、自分に向いているのだろうか、と気後れしてしまう人もいるかもしれない。

 自分が得意なことで人の役に立ちたい。そう思うのはごく自然な気持ちだ。であれば、オフィスワーカーが得意とすることを使ってできるボランティアはないだろうか。つまり、書類を作成したり、打ち合わせをしたり、プレゼンをしたりする、日々培っているスキルやノウハウを活かしてできるボランティアの形である。その一つのユニークな仕組みとして、今回と次回の2回にわたって「サービスグラント」について紹介しよう。

「サービスグラント」とは?
 まずは、サービスグラントという言葉について説明しよう。

 グラント(grant)とは、英語で助成金を意味する言葉だ。グラントといえば、一般的に、財団や企業などがNPOや学術研究に対して資金的なサポートをするものをイメージする。これに対して、サービスグラントの場合、提供するものはお金ではなく、知恵やアイデア、プロフェッショナルスキルなどの「サービス」である、という点がユニークなところだ。

 NPOにとって、活動資金を手に入れることは活動を支える上で何よりも大事なことだ。だが、資金以外にもNPOが必要としていることは多々ある。

その典型的な例がホームページだ。NPOの中には、活動内容が非常に優れているにもかかわらず、ホームページを通じた情報発信が思うようにできていない団体は少なくない。作成してからかなりの年数が経過しているがなかなか更新が進んでおらず、最近の情報が掲載されていなかったり、情報の編集の仕方が悪く、読み手にとってその団体が本当に伝えようとしていることがうまく伝わっていない、というようなことが往々にしてある。これは、その団体の活動に問題があるのではなく、団体が活動を伝える伝え方のテクニックで損をしているのである。そのような団体に対して、サービスグラントによってホームページ制作を支援することで、その団体がより多くの人に認知されたり、活動をより正しく理解してもらえるような情報発信の基盤を提供することができる。団体の認知や正しい理解が広がれば、より多くの支援者やボランティアに巡り会う可能性は高まる。効果的な情報発信は、団体の発展に大きくつながっている。

 このようなサービスグラントの仕組みを生み出したのは、サンフランシスコに拠点を置く「タップルートファウンデーション」というNPOだ。2001年に活動を開始した同団体は、シリコンバレー周辺で働くビジネスプロフェッショナルたちを中心に多数の参加者を集め、毎年100件近いサービスグラントをNPOに対して提供している。現在では、サンフランシスコ以外にもニューヨーク、ボストン、シカゴ、シアトルへと拠点を展開しており、ボランティア登録者数は6,000人を超え、サービスグラントを提供した実績は400団体以上を数える。

 タップルートファウンデーションでは、NPOに対して、ホームページのほかに、次のようなサービスグラントを提供している。

○ブランディング … NPOの団体名やロゴデザインなど、NPO団体のトレードマークを提供している
○カタログ … 団体の活動概要や支援者への寄付や寄贈の依頼をするための印刷物を制作するサービスグラントである
○支援者データベース … 支援者の個人情報を管理するためのデータベースを構築・提供している
○年次報告書 … NPOの活動内容をまとめ、関係者や支援団体等に報告するための報告書の作成を支援している
○業務改善 … NPOの業務効率や生産性を高めるため、人材の適切な配置や業務フローなどをコンサルティングするサービスを提供している。

 このように、タップルートファウンデーションは、NPOが力強く発展するための支援を、サービスグラントという独自のプログラムを通じて提供しているのである。



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