オフィス・アップサイジング

home  writing's index  企業の「コミュニティ参加」のための方法論
記事・論文

第5回 企業に求められる「コミットメント」世界の動きに目を向けよ

 

 前回は、アースデイマネーの事例紹介を中心に、日本各地の草の根レベルで展開する「地域通貨」の活動と、そこに企業が参加する方法について紹介した。

 地域通貨の取り組みは、現時点ではそれぞれの地域ごとのローカルでかつ小規模な動きであり、また、小規模であるがゆえに、顔の見える関係やコミュニティとしての一体感などが醸成されるという魅力もある。

 一方で、こうした活動には、いまはまだ小さい規模だが、その中には、より大きな社会のうねりへと発展するようなさまざまな契機が宿っているかもしれない。筆者自身、海外のいくつかの事例を見ながら、小さな力、個別の力を結集していくことによって大きな潮流へと発展していく可能性について見聞きする機会がある。

 そこで今回は、日本にはまだないような規模感で、社会貢献的な事業を成し遂げている海外の事業をいくつか紹介しよう。これらの事例を知ることは、日本のNPOにも大きな発展の余地があり、また、企業がもっと踏み込んだ社会貢献やコミュニティ参加をすることによって、社会に新しい風を吹かせることができるという可能性やイメージを提示することにしたい。


韓国全土で急成長するNPO - ビューティフルストア
 お隣の韓国で急成長しているNPOがある。「ビューティフルストア」というリサイクルショップを運営するNPOだ。同団体は、韓国で人権問題などに長年取り組んできた弁護士らを中心に発足したもので、2001年から活動を開始している。中古品を再利用・販売することによって得た収益を社会貢献活動に活用するというモデルを韓国全土に展開しており、ビューティフルストアの店舗では、個人や企業から、衣類や電気製品、書籍など幅広い種類の中古品の寄贈を受け付けている。店に集まった物品は、物品としてそのまま、あるいは、それらを販売して得た収益金を寄付として、生活困窮者や障害者など社会的なサポートを必要とする人たちに提供している。また、ビューティフルストアの店舗そのものが、ボランティア団体の会合やイベント場所として活用されるなど、地域の社会貢献活動の拠点としての機能も果たしているという。

 特に目を見張るのは、このビューティフルストアの急成長ぶりだ。活動を開始して以来わずか5年ほどで、現在では韓国全土に80店舗を構えるネットワークへと育っている。しかも、それぞれの店の立地は、ショッピングモールの中や、市街地の1階路面店など恵まれた場所にある。一体これだけの店をどうして出店できるかというと、実はこうした店舗スペースそのものもショッピングモールの施設運営者やビルオーナーなどから「寄贈」されているのだそうだ。

 ビューティフルストアは、2006年までの期間に25億ウォン(約3億3000万円)を寄付した実績を生み出しているが、今後ますます店舗が増えているため、この金額は増加の一途をたどるに違いない。これほどアグレッシブな発展をするNPOを日本では見たことがないし、一方で、彼らのような活動があったとして、自ら進んで店舗スペースを提供するようなショッピングモールは、今のところ顕在化していないように思われる。だが、彼らの取り組みは日本でも十分参考にできるのではないだろうか。


1億ドルを超す寄付を達成 - eスクリップ
 米国のeスクリップ(eScrip)という仕組みも、筆者が注目する仕組みの一つだ。
 eスクリップとは、次のような仕組みである。

①まず、利用者はeスクリップのホームページから、参加店のポイントカードやクレジットカードの番号を登録する。②同時に、利用者は、自分の子どもが通う学校や、自ら支持するNPOなど寄付先を最大3件まで指定する。③あとは、利用者が参加店で登録したポイントカードやクレジットカードを使って商品を購入すれば、購入額に対して所定の割合の金額が、指定した学校やNPOに対して寄付される、という仕組みだ。ちなみに、参加店が拠出する金額の割合は個別に異なる設定がされているが、概ね売上の1%から5%の間が一般的である。
 
 日常の消費活動を通じた小額の寄付金の積み重ねによって、eスクリップは大きな成果を生み出している。1999年に活動開始以来、2006年の時点で、eスクリップによる寄付額は総額で1億ドル(約120億円)を突破した。これだけの金額が全米の学校やNPOへと配分されているのだ。

 eスクリップは、独自にポイントカードを発行したり、小売店に端末などを設置する労力を一切かけるのではなく、既存のポイントカードやクレジットカードのインフラを最大限に活用するスマートな手法と、幅広い小売店等の協力を得て、学校やNPOへの寄付を発生させているというわけだ。企業にとっては、eスクリップに参加することが、学校やNPOの関係者が来店し購買する動機付けになることがメリットとなっている。eスクリップには、百貨店のメイシーズやスーパーマーケットのセイフウェーなどをはじめ、レストランや洋服、雑貨などの小売店、航空会社や新聞の定期購読、さらには、バーンズアンドノーブルズやデルコンピュータなど700以上のオンラインショップなど、名だたる企業が参加している。



Page: 1 | 2 次へ