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荒廃する日本の山林を救え「竹」から始まる社会貢献

 

荒廃する日本の山林を救え「竹」から始まる社会貢献
竹を活用した商品開発から、社員参加型の「竹切りツアー」まで


深刻化する山林の荒廃
 いま、日本各地で山林の荒廃が進んでいる。
かつて日本の山林は人々が山に入り、小枝を刈って焚き木にしたり、山菜や木の実を収穫することで適度に手入れされていた。人の手が入ることで多様な草木がバランスよく育ち、人々は山菜や木の実などの山の幸の恩恵にあずかることができる。まさに人と自然が共生していたのだ。
 しかし、「おじいさんが山へ柴刈りに行きました」は昔話のこと。いまや山に入る人はほとんどいなくなった。山に手が入らなくなると繁殖力の強い植物が生い茂る反面、木の実や背の低い草木、新しい芽は育ちにくくなる。次第に生態系のバランスが崩れていく。
 なかでも、手つかずとなった山林を象徴する存在ともいえるのが「竹」である。竹の成長速度は驚異的で、春先に土から顔を出したタケノコが、夏には二〇メートル以上に達する。また、竹は上に伸びるだけでなく地下茎の成長も速い。そのため竹林の周辺に地下茎が広がりそこから芽を出す。以前のように人の手が入った山林ならタケノコを取ることで竹の増殖を防げたのだが、放置された山林の場合、あっという間に竹が育ち、次第に竹に圧倒されてしまう。


竹は有望な資源
 成長力の旺盛な竹は、山林の荒廃の象徴という反面、資源としてみれば実に有望でもある。竹の活用をめぐっては多くの人が知恵を絞り、さまざまな技術が開発・研究されている。竹をつかった繊維や竹から紙を漉く技術、竹を使ったフローリングなど、新製品も続々と生まれている。アパレル関係でも、竹の繊維を使ったタオルやマフラー、靴なども登場している。こうした竹を活用した新製品の動向には今後も注目である。
 と同時に、高度な技術や設備がなくとも、竹そのものを大量に活用する方法を考えることも有効である。
 筆者は、昨年四月から十月にかけて代々木公園において関東近郊の有機農家等が集まる朝市「アースデイマーケット」の運営に関わっている。マーケットには、毎回一万人以上が訪れ、旬の新鮮で安全な食材を求める来場者で賑わいを見せる。今年も四月から十一月まで開催予定だ。
 このマーケットにおいて、昨年はレンタルの金属製のテントを使用していたが、今年はテントから手づくりしようと考え、オリジナルの竹テントの製作に着手している。軽くて加工しやすい竹の性質を生かして、何回かの試作を重ねながら、コンパクトで持ち運びにも適した竹テントが仕上がりつつある。
 この竹テントを制作するため、目下、筆者を含む有志で千葉の山林に竹切りに出かけている。竹は成長が鈍る冬場に伐採するのがよく、特に新月の日に切った竹は水分の含有量が少ないため長持ちするといわれている。竹切りの作業は決して楽ではないが、冬の山に入って汗を流すのはある意味リフレッシュになる。竹切りをしたあとに整然とした竹林を見ると、なぜか気分がスッキリしてくる。


読者諸氏へ二つの提案
 そこでまずは読者諸氏に、こうした「竹切りツアー」に出かけてみることを呼びかけたい。
 大都市の近くにも、竹の増殖で手に終えなくなっている山林は多々ある。こうした山の手入れを促進しようと、千葉県では「里山情報バンク」という制度を始め、山林の持ち主と、山林を手入れしたい民間のグループとのマッチングを行っている。企業の社員参加型の社会貢献プログラムとして、竹切りの活動を検討してみてはどうだろうか。
 また、そこから切り出してきた竹を有効活用することも提案したい。
例えば、使い捨て食器としてプラスチックではなく竹をつかってみてはどうか。プラスチックは地下資源に由来するためCO2排出につながるが、竹は地上資源であるためCO2の排出量増加につながらない。企業としての環境貢献と、日本の身近な地域の環境保全活動を兼ねることができる、まさに一石二鳥の策だ。

竹の活用というアプローチは、企業としてのビジネスと社会貢献活動とを両立させる切り口を提供するヒントになると思う。でも、そうカタク考えなくても、個人的には、まずは第一歩として、この春にでも職場の仲間や家族でタケノコ狩りに行ってみることからオススメしたい。



(初出:繊研新聞「繊研教室」に掲載)