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身近な食を大事にする指標「フードマイル」

 

 紅豆ご飯の桜餡かけは259km、10.3グラム。
 玄米プレートは114km、4.5グラム…。

 4月に代々木公園で開かれた「アースデイ東京」の飲食エリアには、旬の食材をふんだんに取り入れたメニューを提供する出店者が集まり賑わいを見せた。そこで登場したのが冒頭の数値。各出店者の食事のサンプルを並べたディスプレイに、カロリー表示でも塩分量でもない、「フードマイル表示」という新しい表示手法がお目見えした。これは、各メニューに使用した食材の移動距離と、 移動に伴って排出される二酸化炭素の量を表示する試みである。

フードマイルの効用
 フードマイルとは、一言でいえば、食品の移動距離のことである。簡単な例で言えば、消費地が東京とすれば、千葉県産のにんじんのフードマイルは50km前後だろうが、メキシコ産のアボカドなら約10,000kmということになる。

 一般に、フードマイルは短ければ短いほどよい。
 フードマイルが短ければ、その食品が身近な場所から運ばれてきたのだからそれだけ新鮮である可能性が高い。新鮮であるということはそれだけおいしく健康的であることにもつながる。また、近場で採れた食品は流通経路がシンプルであり、それだけ生産者と消費者が近いため、安全性も確保される可能性は高い。さらに、遠距離、特に国際的な輸送にあたっては様々な人工的な「鮮度維持」の方策が講じられているだろう。また、輸送距離が長ければトラックや船による輸送エネルギーや冷凍のための電力等が必要となり、それだけ多くの二酸化炭素を排出している。最後に、身近な農産物を購入することは身近な生産者を支え、そのことが地域の中での経済循環を活性化するという効果も指摘できるだろう。

 食料自給率が40%という日本の現状。いまや世界中から食料を持ち込むことが当たり前になっているが、むしろ当たり前になるべきなのはフードマイルの考え方だろう。日本人はもっとフードマイルに敏感になって、身近な場所で採れたものを積極的に選ぶような価値観を育てるように社会全体が向かっていかなければならない。

食を考える新たな指標
 いまや有機JAS認証の野菜も一般的になった。しかし、この有機JAS認証は、特に関東以西の多くの農家からすれば日本の気候風土を無視した現実離れした認証制度であるという声をよく聞く。高温多湿な日本の風土に、ヨーロッパ並みの有機認証を導入したことで、「必要最小限の」農薬しか使わない、きわめて良心的な農家でも有機認証からは門前払いとなっている。反対に、気候条件の整っている中国東北部などで栽培された有機JAS認証の農産物が出回るようになってきた。しかし、こうした海外産の有機認証作物は、フードマイルの観点からすれば必ずしも奨励されるものではない。有機認証に偏重した価値観を見直すには、フードマイルは有効な指標といえよう。

 もう一つ、フードマイルを考える上で重要なポイントが「食肉」の取り扱いである。一般に、1kgの牛肉を生産するには約11kgの飼料(主にトウモロコシ)を必要とし、豚肉の場合は7kg、鶏肉は3~4kg程度が必要といわれている。仮に国産の肉であっても飼料作物の大半は海外産であると考えれば、食肉に関しては割増計算をしてフードマイルを算出すべきだろう。結果的に食肉のフードマイルは仮に国産であっても飼料が海外産なら野菜と比べて格段に大きな数値になるだろう。フードマイルを取り入れることで、肉が野菜よりも環境負荷が大きいことを、端的に表すことができる。

日本に適した食の見方を
 筆者は、有機栽培に共感する一人だし、肉も好んで食べる。ただ、有機栽培を推進するにも日本の気候風土に適したシステムが必要であり、肉を食べるにしてもあまり食べすぎないでおいしく食事を楽しむような食生活は体にもいいし奨励されるべきだろう。
 身近なものを大事にしよう。…フードマイルの考え方からは、そんなシンプルだが地に足のついたメッセージを感じ取ることもできる。


(初出:繊研新聞「繊研教室」に掲載)