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home  writing's index  現代林業 「地域通貨が面白い」
記事・論文

vol.3 “稀少性”とは異なる原理で動く通貨

 

 「お金は使えばなくなるものだ」

 そんなこと、殊更に言うまでもないほど当たり前に聞こえる。

 ところが、この“常識”に対して疑問を投げかけたのが地域通貨の先人たちだ。曰く、通貨は価値の尺度である、価値の尺度である通貨がなくなるということは、長さの尺度であるメートルや重さの尺度であるグラムがなくなるようなものだ。しかし、メートルやグラムはなくならない。したがって、通貨もなくなるはずはない・・・。

 なかなか簡単には飲み込めないかもしれないが、この物言いは、いまの通貨の問題点を単刀直入に言い当てている。すなわち、通貨を支える重要な基本原理は「稀少性」である。お金は常に足りないものであって、誰もが欲しがる貴重品でなければならない。通貨供給量が増えすぎるとインフレが起こり経済が混乱する。経済学は、通貨が潤沢にあってはならないと教えている。しかし、通貨が潤沢にないことが社会の問題を引き起こしていることも事実だ。贅沢の裏に貧困があり、資本家の影には失業者がいる。お金は誰かがたくさん手に入れれば、誰かの手元からは出ていくようにできているのだ。

 地域通貨はそこに逆転の発想をもたらす。お金はどこにでも潤沢にあり、どんどん生み出されてくる。そのとき通貨は競争ではなく共生のための道具になる。

 かつて通貨は「金」という稀少な金属によって価値が支えられる仕組み、すなわち「金本位制」に立脚していた。これに対して、日本国内の地域通貨の中には、金のような稀少資源ではなく、大地の豊かな生産力に根ざした、もっと大らかな仕組みの通貨を発行する動きが見られる。

 今年一月から岩手県の西和賀地域(湯田町・沢内村)で始まった地域通貨の名称は「わらび」。その名の通り、現地の特産品であるわらびを価値の裏づけとして発行される「わらび本位制」の通貨だ。「わらび」は屋根の雪かきの手伝いや高齢者支援に地域外から訪れる“助っ人ボランティア”に発行され、過疎地域の活性化に役立てることがねらいだ。他にもある。長野県美麻村の縁チケットは「みそ本位制」、大分県別府市の「湯路(ゆーろ)」は「湯本位制」で、それぞれ、みそを手に入れたり、入浴できる可能性によって価値が支えられている通貨だ。

 こうしてみると、お金がなくてもお金を生み出す地域通貨のヒントは、実は身の回りに転がっている。

「ちょっとぐらいいいじゃないか、減るもんじゃなしに!」

 そう言えるものを本位に据えた通貨なら、みんなが取り合いをするのではなく互いに譲り合ったり笑い合える関係が生まれるかもしれない。