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home  writing's index  現代林業 「地域通貨が面白い」
記事・論文

vol.4 新しい効用を生み出すお金

 

 地域通貨を取り入れると、円経済が圧迫され、ただでさえ不況の地域に追い討ちをかけるのではないか、という心配を投げかけられることがある。例えば、従来100万円で発注してきた森林整備の作業を、仮に、50万円は日本円、残りの50万円は地域通貨で支払ったら、その事業者にとって死活問題になるのではないか、というのである。

 これは、地域通貨を日本円に置き換える、という考え方である。
 ところが、地域通貨は、日本円では表現できない価値を表すことが、本来の役割である。少なくとも、世界恐慌などといった経済の大混乱期ではない現在の日本においては、地域通貨は円の代替品というよりも、新しい付加価値や今までに実現されていない効用を生み出すものであってほしい。平たく言えば、「みんながハッピーになるためのお金」になることが理想なのだ。

 そこで、先ほどの森林整備の例を挙げながら別の考え方をしてみると、次のようなアイデアも出てくる。

 予算100万円は変わらずとしよう。その代わり、森林整備を実施するに当たって、従来は一ヘクタールの森林を対象としていたところを、その二倍にするという条件をつけてみよう。いままでと同じやり方では、当然人手が足りなくなるが、そこに森林ボランティアを取り入れる。ボランティアだから、自分たちだけでは作業はできない。そこで、事業を受託する事業者が「先生」役になってボランティアたちを指導する。ここに地域通貨の出番がある。ボランティアに対しては地域通貨を支払い、地域の商店や自治体が運営する温泉などの公共施設で利用できるようにする。地域の商店にとってみれば、もともと森林ボランティアがなければそもそも消費が発生しなかった。仮に一部地域通貨で受け取ったとしても、新しい顧客が新しい消費をしてくれるのだからメリットになる。自治体は、既にある公共施設を提供すればいいだけだからまったく痛まない。

 しかも、気づいてみれば従来の倍の面積の森林が整備されている。

 お金が目的だと思うなかれ。社会の効用を高めることが、地域づくりのめざすところである。日本円をつかうか、地域通貨をつかうか、それは手段の選択に過ぎないのである。