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home  writing's index  現代林業 「地域通貨が面白い」
記事・論文

vol.7 「顔の見える関係」が流通活性化の王道

 

 通貨というと厳密で冷徹なものというイメージを抱くが、これまで紹介してきたように地域通貨はもっと人間味のある、コミュニケーションツールとしての側面が強い。そのため、地域通貨を元気に運営する手法は、公定歩合を上下させたり発行量を多くしたりするといった法定通貨で一般的な方法とは異なったアプローチとなる。

 というのも、地域通貨を活性化させるもっとも重要な手がかりは、その通貨に参加するメンバーに「顔の見える関係」をつくることである。なぜなら、地域通貨は、具体的な価値の交換に根ざして往来するものであるから、具体的な交換が生まれるようなコミュニティを育てることが結果的に地域通貨を活性化させることにつながるのである。

 いくつか例を紹介しよう。山梨県の八ヶ岳山麓で流通する「八ヶ岳大福帳」は、毎週水曜日の昼下がりに、地域通貨に参加する店の一つであるパン屋の店内で、三々五々人が集まる「たまり場」を用意している。特に目的や議題があるわけでもない集まりだが、そこに行けば人に会えるということで集まってくる。こうしたフェイストゥフェイスの集いがあるからこそ、「こんど農作業を教えて」、「家の留守番をして」と、気軽に頼める関係ができていくのである。

 私が代表理事を務める東京・渋谷のアースデイマネーでもこのことを意識している。アースデイマネーでは、毎月一回第四土曜日に「アースデイMONDO(問答)」というイベントを実施している。これは農業や都市計画など多様な分野のプロフェッショナルを招いて開かれる対話の場だ。ここで得た知的刺激をもとに、例えば、家庭で出た生ごみを乾燥させて回収し農村に送り肥料化する新しいプログラムが生まれるなど、アースデイマネーの活性化に寄与している。

 このようにイベントの企画内容やその場の雰囲気はそれぞれの地域通貨によって異なっているかもしれないが、大切なことは、参加する人が同じ場を共有することがコミュニティづくりにつながり、地域通貨の流通にも効果を発揮するということだ。

 地域通貨とは、英語では「コミュニティカレンシー(通貨)」という。コミュニティという言葉は、物理的な範囲だけでなく、精神的なつながりという意味をも含んだ深みのある言葉だ。したがって、地域通貨運営者にとって、通貨の流通を活性化させるためにもっとも大切な仕事とは、いかにして人が集まってお互いに交流できるような場をつくりだせるか、なのである。