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home  writing's index  現代林業 「地域通貨が面白い」
記事・論文

vol.9 「先行事例」に視察に行くのは正解か?

 

 いざ地域通貨を始めるとなれば、先行する事例を視察するなどして情報収集に努めることも重要な作業の一つだ。しかしながら、日本国内で300以上の地域通貨が立ち上がっている今日でも、それらが実際にどのぐらい“流通”し、“成功”しているかといえば、多くの事例で、はかばかしい成果が上がっているとはいえないのが正直なところだ。それらは「先行]事例ではあっても、「先進」事例ではないかもしれないのだ。

 もちろん、地域通貨の実践者たちの話を聞き、彼らがどのような課題を抱え、今後どうしていきたいと考えているかにじっくり耳を傾けることは大いに参考になる。だが、現状の事例を形式だけ真似して通貨をつくるだけでは、うまくいかない可能性のほうが断然高いことも事実である。

 むしろ地域通貨を立ち上げる際に参考にすべき事例とは、ひょっとすると地域通貨の事例よりも、はるかに多くの消費者の財布の中に納まっている「ポイントカード」かもしれない。ポイントカードは、基本的に企業の販売促進や顧客囲い込みのための仕掛けである。しかし、それが奏功して数多くの会員を集め、消費行動に何らかの影響を及ぼしているケースも少なくない。そのポイントカードが目的を変えて、企業の儲けではなく地域の活性化や山村の振興のために使われたとしたらどうか、と考えてみよう。

 そうすると、いろんなことが浮かんでくる。航空会社のマイレージプログラムにはどの区間に乗るとどれだけのマイルが貯まるかの一覧表があるように、地域通貨にはどのような活動や作業に参加するとどれだけの地域通貨が手に入るかの一覧表が欲しい。何マイルを貯めるとどこに行く特典航空券と交換できるかのチャートがあるように、地域通貨を貯めるとどんなご褒美やサービスが待っているかのチャートが欲しい。クレジットカードには会員限定でコンサートや映画の試写会等に招待する企画があるように、地域通貨を持つ人が特別に参加できるパーティーや親睦の集いなどが開かれたらいい。そして、カードの会員向けに毎月情報誌が送られるように、地域通貨の参加者にも定期的に山村の情報が送られるようになっているといい。

 このように、地域通貨以上にはるかに多くの人に普及している企業のポイントカードを参考にすることは、地域通貨を面白くする上でいろいろな発想を刺激してくれることだろう。