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記事・論文

vol.11 山・川・海の交流が地域通貨をダイナミックにする

 

山・川・海の交流が地域通貨をダイナミックにする
~山口県の流域通貨「フシノ」~



 地域通貨に参加する主体が多様であるばあるほど、地域通貨の動きはダイナミックになる。
山口県内を山口市から瀬戸内海へと注ぐ椹野(ふしの)川。この川の流域全体を舞台に流通する「フシノ」は、そのことを実証する貴重な事例だ。
 山間部から流れ出した川が平野を下り海に注ぐ、全長三〇キロの椹野川の流域には、山・川・海という多様な環境がある。流域通貨「フシノ」は、同じ川で結ばれていながらなかなか顔の見える関係を築くことがなかった様々な主体をつなぎ合わせることに役立っている。
 フシノの広がりは、フシノが発行されるボランティア活動の豊富さを見ても一目瞭然である。山間部の地元住民による河川清掃が行われたかと思えば、地域のラジオ放送局が主催する清掃活動もある、海側の自治会による海岸のごみ拾いもある。今年の夏だけで見ても十五本以上のプログラムが流域のあちこちで展開し、参加人数も延べ二千人近くに達する勢いだ。
 その中で特に注目すべきことは、地域住民の自主的な団体だけでなく、森林組合、漁業協同組合、農協など、生産者の団体が積極的に参加していることだ。なかでも、山口中央森林組合の場合、森林での下刈りなどの作業にボランティアを募集するだけでなく、森林という持ち前のフィールドを飛び出し、自ら海岸清掃イベントを主催している。組合員とともに海岸に出向き、積極的に漁協など他の生産者団体との交流を深めているのだ。
 同じ川で結ばれていながら、これまで滅多に顔をあわせることのなかった山・川・海にかかわる生産者たちが、ひとつの通貨をきっかけに、清掃や森林作業の場をともにする。それは、単に「友達を増やす」以上の効果を生んでいる。例えば、漁業者は森林の価値を見直し、植林を通じて川の環境を良くすることを真剣に考えるようになる。農業者は排水の仕方を見直し、漁業者にできるだけ迷惑のかからないよう気をつけるようになる。立場が違うそれぞれの関係者が、お互いにつながっていることを意識し、理解しようと努めることは、回りまわって自らの仕事に対する理解を深めるきっかけにもなっている。
 流域通貨「フシノ」のモデルは、全国各地で山・川・海との交流を通じた地域活性化を考える地域にとって大いに参考となるだろう。

〔キャプション〕
この夏、流域の交流を目的として山口中央森林組合が主催した海岸清掃の様子。山・川・海の顔の見える関係が着実に築かれている。フシノについての詳しい情報はホームページを参照。(http://www.fushino.jp/) ※写真はホームページから引用。