オフィス・アップサイジング

home  writing's index  現代林業 「地域通貨が面白い」
記事・論文

vol.12 地域通貨は「ブーム」ではなく「道理」を体現するもの

 

 今年一年間という期間、貴重な紙面をいただいて地域通貨に関する話題を紹介させていただいた。拙い文章にお付き合いいただいた読者諸兄、また編集部の岩渕さんには心から御礼申し上げたい。

 それにしても我ながら不思議なことといっては不謹慎かもしれないが、この地域通貨というテーマ、思った以上に息が長い。人によっては「ブームは去った」と切って捨てる人もいる。しかしながら、最近の動きで言えば、三重銀行が地域通貨と連携した金融商品を発売するなど新聞報道の素材は依然として減ることはないし、各地で生まれる地域通貨の数もそれほど勢いが衰えたような気がしない。また嬉しいのは、老舗といわれる長年続いている地域通貨も、いまでも元気でいることだ。

 むしろ、地域通貨の成果というのは、これからじわじわと出てくるのかもしれない。連載の中で紹介した岩手県西和賀地域の「わらび」は、冬場の雪かきに加え夏の草取りなど交流人口の拡大に着実に貢献している。“わらび本位制”の価値を支えるワラビが、根付けしてから三年たって収穫するのがいまから待ち遠しい。前号で紹介した山口の「フシノ」は、ある地域の活動が次の活動を呼び人の輪が広がって川の流域全体に浸透していく様子が見事である。茅葺き屋根の修復に地域通貨「桃源」を活用している秋田県峰浜村は「白神市」へと合併し、人口四千人の村の資源から人口十万人の都市の宝としてより多くの注目を集める存在となってきた。

 進む速度こそ「スロー」かもしれないが、丁寧に何かを育てていれば、それがきちんとした成果を生む。この単純きわまりない道理が、どうやら最近になって、実に正直に芽を出そうとしているように思われる。

 こういうことを考えるとき、いつも、草津市の地域通貨「おうみ」の事務局の方の言葉を思い出す。「地域通貨で一儲けはできませんが、人儲けはできます。」地域通貨は、すぐさま経済的な利益をもたらすものではないが、人のつながりをつくり、真の豊かさをもたらしてくれる、ということを端的に言い表した名言だと思う。私もそれに習って、よくこう言っている。「地域通貨は、円ではないが縁づくりをするものです」と。根っこは同じことだ。

 地域通貨は地域の課題を解決する万能の特効薬でもカンフル剤でもない。しかし、地域通貨をきっかけに、すこしでも、つながりや循環を意識して、それを身の回りに実現するようにすれば、きっと結果は付いてくる。しかも、地域通貨のいいところは、あなたのすぐ近くにある紙一葉とペンを手に取ればすぐさま始められるといっても過言ではないことだ。特に、森林というすばらしい資源をお持ちの読者の方であれば、なおさらである。さあ、今度は読者の皆さんが地域通貨にチャレンジする番かもしれない。