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「グラントマネジャー」の醍醐味

 

 NPOのPR活動を支援するサービスグラントは、出来上がったスタイリッシュなカタログやサイトを見ると実に華やかな仕事に見える。けれども実際は、ひとたび作業の手順を間違えれば様々な問題が発生しかねない。担当者が締切を守らない、メンバー同士で意見が食い違う、メンバーのテンションやモラルが下がる、NPOとの意見調整が進まない、等々。

 これらの障害を未然に防ぐため、サンフランシスコの「タップルートファウンデーション」では、プロジェクト開始初期の段階で、サービスグラントを通じて提供する成果物を明確化し、ボランティア一人ひとりの役割を正確に定義している。具体的には、タップルートのボランティアはそれぞれ次のような「肩書き」を与えられる。

グラントマネジャー
 サービスグラントの全体統括

ブランドストラテジスト
 コンセプト、見せ方、伝え方の方針の策定、運用

マーケッター
 NPOとその利害関係者のニーズ把握、戦略策定

コピーライター
 マーケティングコピーの作成

デザイナー
 WEBやカタログのデザインを担当

システム開発者
 WEBやデータベースのシステム開発を担当

 これらの役割の中でもっとも重責を担っているのがグラントマネジャーであり、チームメンバーとNPOとの間をつなぎ、プロジェクトの円滑な進行に責任を持つ。サービスグラントの初期の段階では、マーケッターとともにNPOに対するヒアリングなどを行い、NPOのニーズや現状を把握する。次に、ブランドストラテジスト等と戦略を策定しゴールイメージを明確化する。それらが定まった時点でデザイナーやシステム開発者とともにWEBやカタログの実際の制作に入り、サービスグラントの全期間を通じて、各分野のプロフェッショナルと仕事を進めていくことになる。

 チームのメンバーだけに配慮するのではグラントマネジャーの役割として十分ではない。NPOとの間で日ごろからコミュニケーションを取り、NPO側のニーズをしっかり把握すると同時に、メンバーの作業スケジュールや進捗状況を管理する役割を担う重要な役割を担っている。

 タップルートの場合、グラントマネジャーになる条件とは「マーケティング、人事、専門性の高い顧客対応業務等の分野で2年以上の経験を持つ、あるいはプロジェクトマネジャーとしてこれまでに具体的な成果を挙げた人物」であるという。こうした条件を日本でも大方適用できそうだ。例えば、市場調査をもとにクライアントに事業戦略や広告宣伝の方向性などを提案するマーケッター、顧客ニーズを聞きながら新商品開発に取り組む企画担当者、企業や自治体の経営戦略を提案するコンサルタント、顧客の悩みを聞き取り新たな商品・サービスを提案する企画型の営業担当者などは、グラントマネジャーの役割を担う最有力候補だろう。

 現状を把握する力、戦略を提案する力、目標を設定する力、作業を着実に進める力。グラントマネージャーには様々な能力が求められる。同時に、サービスグラントが最終的に完成を迎えたときにもっとも大きな喜びを味わうのは、すべての過程を見守ってきたグラントマネジャーその人に違いない。


(初出:「ソトコト」/スローマーケティング講座は「ソトコト」の連載企画として掲載されたものです)