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タップルートファウンデーション訪問! - part2 -

 

 午後7時。サンフランシスコの中心部にあるタップルートのオフィス。一日の仕事を終えたボランティアが三々五々集まってきた。メンバーの構成は、マーケッターやWEBデザイナーなどの企業人たち。

 自分がたまたま居合わせたこの日は、LGBTQQ(レズビアン、ゲイなど多様な性的オリエンテーション)の子どもたちを支援するNPOのブランディングを提案するチームの初回の会合だった。

 「忙しいなか集まってくれてありがとう。プロジェクトの一員として皆さんのようなプロフェッショナルと一緒に仕事ができることにとってもワクワクしています!」

 会議を取り仕切るのは「グラントマネジャー」という全体統括役を担うマーケッターのジェニファー。彼女の言葉を皮切りに、開始と同時に会議は着々と進んでいく。自己紹介は15分。NPOのニーズとその社会的位置づけに関する説明が各30分。ヒアリング先リスト作成と質問項目の洗い出しが各20分。実にスムーズな進行だ。

 そのスムーズさを支えているのは、タップルートが用意した会議のプログラム。サービスグラントの過程で発生するすべての会議について、どのような課題を何分ぐらい話し合い、何を決めればよいかのシナリオを事務局がきちんと準備している。筋書きに沿って作業を進めれば、参加するボランティアたちは本来発揮すべきスキルに集中できるというわけだ。

 午後9時ちょっと前。会議の最後に出揃うのは、誰が何をいつまでにやるかの割り当て。オンタイムで会議がまとまった。あとは電話や電子メールで連絡を取りながら、それぞれが週5時間前後稼動しながらプロジェクトを進めていく。

 地元の雑誌が彼らのことを「ホワイトカラー・ボランティア」と呼んだように、タップルートの現場にはアメリカのホワイトカラーの生産性の高さが存分に発揮されていた。

 会議の翌日、実際にタップルートのサービスを受けているNPOを訪ねた。バークレーにある「センター・フォー・インディペンデントリビング」。高齢者や障害者が在宅で暮らすために必要な商品の情報やボランティアを仲介するNPOだ。サービスグラントの窓口役のベリンダは、タップルートについてこう語った。

「普通では決して一緒に仕事をすることがない人たちで私たちも勉強になったわ。恐らくタップルートの人たちと私たちとが共有していたのは唯一、プロジェクトを成功させたい、ということだけ。お互いのカルチャーも日ごろ暮らしている環境もまったく違う人たちだったわ。だって、私たちの散らかった事務所を見て“ファンキー!”と言ったり、隅っこの欠けているこのテーブルを見て“クール”と言ったりするのよ! 私たちは、そんなこと感じたこともなかったわ」

 普段出会うことのない人々の溝を軽々と飛び越えて、普通では起こりえない新しい出会いをつくりだしているのがタップルートなのだ。

「タップルートのチームは、私たちが仕事した中でもっともプロフェッショナルなチームだった。お金にしたらすごい金額よ、きっと!」

 距離が離れているがゆえに、落差が大きいがゆえに、両者をつなぐことによって発生する価値も大きいようだ。


(初出:「ソトコト」/スローマーケティング講座は「ソトコト」の連載企画として掲載されたものです)