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タップルートファウンデーション訪問! - part1 -

 

 ユニオンスクエアから程近いギアリー通りに面したビルの3階に、天井が高く広々としたタップルート・ファウンデーションのオフィスがあった。

 タップルートは、NPOに対して「サービスグラント」を提供するNPOだ。グラントとは助成金のことだが、サービスグラントとは文字通りサービスによる助成のこと。しかもタップルートの特徴は、ITやマーケティングの高度なスキルを持つボランティアが、一流のホームページやカタログをNPOのために制作して提供していることだ。

 代表のアーロン・ハースト氏は、実は私と同じ29歳。ミシガン大学を出てシリコンバレーに移り、ドットコム企業を渡り歩いた後、2001年にタップルートを立ち上げた。

「僕はマーケティングの人間だから、自分がよく知っていることをプログラムにしたのさ」

 タップルートのサービスグラントは、彼がドットコム企業で身につけたITやマーケティングのスキルを、企業ではなくNPOを対象としたかたちで編成しなおし、彼と同じように高度なスキルを持つ他のボランティアが参加できるようにしたものといえよう。相手がNPOであれ、ブランティングやネーミング、ホームページやカタログの制作に必要なスキルや仕事の流れはそうは変わらない。あとは、必要なスタッフが集まり、ストレスなく作業が進み、予定通りに成果物を納品できる、そう、「仕事ができる」ことが何よりも大事なことだ。

 そのために、異なるスキルを持つボランティアを組み合わせてチームを作り、しかも、すべてのボランティアの稼働時間は週5時間以内となるよう各自のタスクが細かく分解されている。参加するみんなの役割が明確で、ゴールもはっきりしているから、プロジェクトがきれいに進んでいく。

 タップルートのスタッフはアーロンを含めて6人。つい最近、ニューヨークにもオフィスを開き、こんどはシカゴにも展開するかもしれない。この人数で、現在稼動中のサービスグラントのプロジェクトはおよそ60件、年間では100件を超すプロジェクトが動いている。そのマネジメント力、生産性の高さには驚嘆させられる。

「サービスグラントのNPOを立ち上げようと思ったのはいつ頃?」
「2001年さ」
「タップルートの設立も2001年ですよね」
「そうさ」
「すばやいですね」
「僕はアグレッシブだからね」

 正直、アーロンは、実にあっさりした人物、という印象だ。質問に対しては必要最低限のことしか答えず、簡潔で正確だ。あまり「語る」ということをしない。しかし、尋ねた質問にはきちんと答えてくれる。

「日本でやるとしたらどうしたらいいかな? 何かアドバイスは?」
「まずは自分がよく知っている分野で、小規模でいいからプロジェクトをやってみることさ」
「そっか。なるほどね。タップルートトーキョー、とまで行けるか分からないけど、何かトライしてみるよ!」

 アーロンの仕事ぶりを目にして、ひょっとすると忘れかけていたアグレッシブな気持ちをもう一度取り戻したような気がした。


(初出:「ソトコト」/スローマーケティング講座は「ソトコト」の連載企画として掲載されたものです)